産業医として働く

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産業医の役割

企業の一員として従業員の健康管理を行う産業医は人気の職業であり、選択肢の一つとして考えている医師も多いのではないでしょうか。産業医は企業の業務時間帯に勤務し、オフィスワークが中心となるため、生活サイクルが安定しやすい仕事と言われています。

働き方改革に伴い、産業医の重要性が社会から注目されています。産業医の業務内容は健康診断や健康相談が最も多く、メンタルヘルスや長時間労働に関する相談は3割程度ですが、今後より比重を増していくでしょう。従業員のメンタルヘルスを重要視して、精神科医と契約する企業も増えています。

企業は法律によって決められた人数の産業医を選任しなければなりません。これまでは選任義務に従っていただけの企業も、働き方への社会的関心の高まりにより、産業医の質を見るようになってきています。産業医の有資格者は全国に9万人いますが、企業が期待する人材を探すのは難しいため、これから産業医を目指す人にも活躍のチャンスは十分あります。

産業医になるには

産業医になるには、労働安全衛生法が定める一定の要件を満たさなければなりません。具体的には、以下の要件のいずれかを満たす必要があります。

  • ①厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
  • ②産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  • ③労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  • ④大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
  • ⑤その他厚生労働大臣が認める者

産業医資格を取得するルートとしては、①研修を受けて産業医資格を取得する場合と、③労働衛生コンサルタント試験に合格して産業医になる場合が一般的です。研修や試験勉強に充てることができる時間を考慮して、資格取得のタイミングを検討してみてはいかがでしょうか。

これから求められること

それでは、これからの産業医には何が求められるのでしょうか。1つは、企業が抱える健康課題を見つけ出し、改善策を企業に実行させることです。従業員の相談をただ待つのではなく、職場がどのような配慮やルール作りをすべきかなど、従業員の健康確保に積極的に関与していくことが求められます。

もう1つは、企業の一員としてのバランス感覚です。企業によって従業員の年齢やバックグラウンドは異なり、健康管理に対するスタンスも様々です。企業ごとのカラーを見極めて、その企業に合った解決策を提案しなければなりません。労働基準監督署の方針にも従う必要があるため、ときには社会保険労務士や経営コンサルタントのような視点も求められます。

キャリアアドバイザー 海野