医師の働き方改革

目次

医師の特殊性

政府が推進する働き方改革ですが、もちろん医師も例外ではありません。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では、医師の健康と医療の質の確保のために長時間労働を是正する必要があり、性別を問わず働き続けられるように、多様で柔軟な働き方の実現を目指すとしています。そして、医師の働き方の特性として、以下の4つが合わさっていると考えられています。

  • ・不確実性(疾病の発生や症状の変化が予見不可能であること、治療の個別性、治療効果の不確実性があること)
  • ・公共性(国民の求める日常的なアクセス、質(医療安全を含む)、利便性、継続性等を確保していくこと、職業倫理が強く働くこと)
  • ・高度の専門性(医師の養成には約10年の長期を要し、業務独占とされており、需給調整に時間がかかる中、医師でなければできない仕事が存在すること)
  • ・技術革新と水準向上(常に知識・手技の向上を必要とし、新しい診断・治療法の追求と、その活用・普及(均てん化)の両方が必要であり、それらは医師個人の努力に依存してきたこと)

検討会では、「こうした特性がある中、勤務環境整備が十分進んでおらず、出産・育児期の女性など時間制約のある医師にとっては就業継続しにくい働き方となっている。」と報告されています。

労働時間の短縮

これまでの検討会では、労働時間短縮を強力に進めていくための具体的方向性として、以下の3つを徹底することに加えて、医療機関全体としての効率化や他職種も含めた勤務環境改善に取り組むことが不可欠であるとしています。

  • ・医療機関内のマネジメント改革(管理者・医師双方の意識改革、業務の移管や共同化(タスク・シフティング、タスク・シェアリング)、ICT等の技術を活用した効率化や勤務環境改善)
  • ・地域医療提供体制における機能分化・連携の推進、医師偏在対策の推進
  • ・上手な医療のかかり方の周知

さらに、時間外労働の上限について具体的な議論が交わされており、2018年度内までに取りまとめを行う予定です。

時間外労働上限に関する議論

2024年4月から適用する、勤務医の時間外労働規制における上限水準として、厚労省から以下のような考え方が提案されています。

  • (A)年間および月間の時間外労働上限を設定する。
  • (B)地域医療確保のため、(A)を超える水準を経過措置として適用する。
  • (C)技能向上のため一定期間、集中的に診療経験を必要とする医師については、(A)を超える水準を適用する。

さらに、医療安全の確保などの観点から、次に代表される追加的健康確保措置を(A)ー(C)の要件とする提案もされています。

  • ・連続勤務時間制限を28時間以内とする
  • ・9時間以上(当直明けは18時間以上)の勤務間インターバルを確保する
  • ((A)の医療機関では「努力義務」化、(B)、(C)の医療機関では「義務」化する)

医療関係者の反応は賛否両論であり、(A)の水準ですら過労死の恐れがある、現時点の数値目標としては非現実的である、といった意見が寄せられています。時間設定の取りまとめに向けて、厚労省は素案の準備を進めています。

キャリアアドバイザー 佐野