医師偏在対策の現状

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解消されない医師不足

地方で医師不足が深刻化しています。患者さんはもちろんのこと、その患者さんを受け入れる病院、医師や看護師などの医療従事者にとっても大きな問題です。近年、医学部の定員が大幅に増員されましたが、医師不足は解消されないままです。

医師不足問題の本質は、医師の絶対数ではなく「偏在」にあります。地域・診療科によって医師数に偏りがあるため、東北地方で医師が不足したり、産婦人科医が不足したりといった問題が生じています。

現在の医学部定員数が維持された場合、2025年頃に人口10万人対医師数がOECD加重平均(290)に達する見込みですが、絶対数の増加施策だけでは偏在は解消されないと指摘されています。

医師偏在の背景

医師偏在は2004年にスタートした新医師臨床研修制度がきっかけで顕在化しました。以前は出身大学の医局を中心に行われてきた研修ですが、同制度によって研修先の病院を自由に選択できるようになり、症例が多く勤務条件の良い都市部の民間病院に多くの研修医が流れました。その結果、大学病院が働き手となる研修医を確保しにくくなり、関連病院に派遣していた医師を次々と引き揚げ、地域で働く医師が不足したのです。

さらに、病院勤務医の過酷な労働環境によって、オフィス街のテナントビルに入居・開業する「ビル診」に流れる医師が増えました。比較的負担の軽い診療科への偏在も見受けられます。

様々な医師偏在対策

それでは、具体的にどのような医師偏在対策が講じられているのでしょうか。厚生労働省の「医師需給分科会」では、医師偏在対策の基本的な考え方として、以下の4つが示されています。

  • ①医師偏在対策に有効な客観的データの整備
  • ②都道府県が主体的・実効的に医師偏在対策を講じることができる体制の整備
  • ③医師養成過程を通じた医師確保対策の充実
  • ④医師の少ない地域での勤務を促す環境整備の推進

①の考え方に基づいて、第23回医師需給分科会で「医師偏在指標」の計算方法について大筋で合意されました。この医師偏在指標を用いて「医師少数区域(仮称)」と「医師多数区域(仮称)」が決定される運びです。診療科別の偏在指標についても、まずは産科・産婦人科、小児科から取り組むとのことです。このほか、都道府県が管内の大学に対して、地元出身者枠の設定・増員を要請できる制度(②の考え方)や、医師個人に対する環境整備・インセンティブ(④の考え方)などの対策が講じられています。

キャリアアドバイザー 相川