プライマリ・ケアと総合診療医

目次

プライマリ・ケアの役割

新専門医制度では、従来の18の基本領域に新たに総合診療医が加わりました。総合診療の根底にあるプライマリ・ケアと総合診療医の役割について見ていきましょう。

プライマリ・ケアとは、「Primary」すなわち「初期の」という意味からわかるように、医療の入り口としての一次的な役割・機能です。体の不調を感じたときに、軽症でも相談できる地域密着のクリニックなどがプライマリ・ケアのイメージですね。入り口機能と捉えると誤解しやすいのですが、プライマリ・ケアは単なる病気の振り分け役ではありません。必要なときに病院や介護サービスに繋げられるように、健康について気軽に相談できる信頼関係を築くことが重要です。

最近は専門性の高いクリニックが増えています。疾患ごとに専門医に診てもらうのは患者さんにとってわかりやすいですが、専門医治療が要らない軽微な症状を抱える高齢者はたくさんいます。一つの専門しか診ないクリニックばかりでは、高齢者は何か所にも足を運ばなくてはなりません。

総合診療医と他の専門医の違い

総合診療医は他の専門医とは性質が異なります。従来の18の専門医には専門の疾患や手技が存在し、患者さんの年代や性別、臓器などの明確な専門性があります。それに対して、総合診療医は他の専門医領域と重なり合う部分を持っています。内科や小児科といった他の専門領域の患者さんを、領域をまたがって診療するのです。

専門医にとって専門分野の症例をたくさん診ることはとても大切ですが、総合診療医の場合は、同じ地域の患者さんを継続的に診続けることが大切です。1つの病気だけではなく、患者さんが抱える様々な健康問題に目を向けて、問題解決に向けて働きかけるのが総合診療医の役割です。そのためには看護師や介護スタッフといった他職種との連携が欠かせませんし、介護施設や行政との関わりも必要です。

研修場所についても他の専門医とは考え方が異なります。地域のコミュニティについて学ぶという観点から、総合診療医の研修は医師が不足する地方の中小病院が望ましいでしょう。小さなコミュニティに一定期間身を置くことで、その地域で起こるほとんどの健康問題を体験することができます。どのような健康問題が発生し、どのような対応が求められるのかを学ぶには、地方や僻地は最適の環境です。

キャリアアドバイザー 山路